志した理由〜初心/一期一会

なぜ小三文師匠に弟子入りしたのかを思い出した。
好きなのだ。好きなものは、どうしても好きなのだ。似ていてもよいのだ。師匠の落語がおれの原点だ。原型だ。
そこからすべてが始まっていく。芸の伝承とはおそらくそういうことだ。ただ真似るのではない。しっかりと、そっくりと受け継いで守り、大切に自分の中で熟成させる

俺がそんな話して、たまには、孫の晴れ姿を見に来るかと尋ねた時、
「一期一会というんだよ」
ばあさんは静かにそう言った。
「お茶の心だよ。同じお茶会というのは決してない、どの会も生涯にただ一度限りだという心得さ。その年、季節、天候、顔ぶれ、それぞれの心模様、なにもかもが違うんだよ。
だからこそ、毎度毎度面倒な手順を踏んで同じことを繰り返し稽古するんだよ。ただ一度きりのその場に臨むためにね」

一期一会。好きな言葉です。